2010.03.04 Thursday
鉄とリクルートスーツ
一昨日、新卒採用の面接官をやった。
この時期になるといつもそうだけど、
学生が着るリクルートスーツに
アイロンをあてたであろうその子の母親のことを考える。
あるいは、一人暮らしも少なくないだろうから、
その子はもちろん大変だし、
離れた土地で見守る家族も心配しているだろう。
駅で地図を片手にキョロキョロしている就活生を見れば、
「心から応援してます!一緒に世の中を盛り上げよう!」
と肩を叩きたくなる。
大げさに言えば、駅で横断幕を掲げて旗を振りたいくらい。
言わずもがな、採用に携わる人は、僕も含めて、
真摯に対応して欲しい。
偉そうにする社員が居ても、学生は堂々としていれば良い。
面接していて久しぶりに思い出した話があった。
前にもどこかで書いたり話したりしたかもしれないけど、
ちょうど6年前の今頃、
僕が今勤めている会社の説明会に行ったときのこと。
200人くらいの学生を前に、一人の人事担当者が話していた。
元営業マンらしく、どちらかというと軽いノリのしゃべりだった。
始まって早々、
一番前に座ってた女の子が配られた案内パンフを読んでたら
「ちょっとそこの君、おれの話はそこに載ってないよ」とのたまった。
おいおい大丈夫かこの人事、と僕は腹を立てた。
またそれからしばらくすると、
今度は説明資料を写していたプロジェクターの調子が悪くなった。
「あれー。ちょっと待ってね」
とその担当者はこちょこちょ機械をいじり始めた。
なかなか直らないのに焦る様子もなく、
200人の学生はその間シーンと待ちぼうけ。
学生だって暇じゃない。
僕のイライラはピークに達し、
こいつもうナメテんな、と我慢できなくて手を上げた。
「〇〇さん、あなたは元々営業をやってたということですが、
今日ここに集まっている学生をお客さんやと思ってますか?
(あなたの態度を見てる限りでそうは思えない)
今日200人くらい居るけど、このうち最終的に御社に入社するのは
確率的に1人居るか居ないかで、
残りの99%は他の会社に行きますよね。
もしかしたら御社の取引先かもしれない。
そういうことを少しでも考えたことありますか。」
その人はもちろん、
周りの学生も、唖然としていた。
シーンと静まり返った会場でいきなりの訳分からない発言。
空気読むもクソもあるか、
もうこんなナメた会社どうでもいいわ、と僕は思っていた。
次の日にはもうそんなこともあったなという程度で、
その会社のことは忘れてた。
そしたら、上司か何か別の人から電話がかかってきて
「先日は大変失礼しました。
もしよければ改めて会社に来て話聞かせてもらえませんか」。
その後も面接の度に名前を言うと、
「あー、あなたがあの森本くんか。話には聞いている」と言われた。
誰がこんな会社入ったるか、と思ってたけど
そんな事情を知ったうえでどんどん進んでいくから
ひょっとしたら勘違いしてただけで器のでかい会社かもしれんな、
と思いなおした。
で、いろいろあって今に至る。不思議なもんだ。
ちなみにその人事担当者とは入社してから会ってない。
当然、向うは僕が入社したことを知っている。
一度会いに行って
「その節は失礼しました」と飯でも喰いたいと思っている。